モスフィルムの危機


読売オンラインに映画関係の良いルポがででました。 エイゼンシュタインやタルコフスキー、ニキータ・ミハルコフ等を輩出 したモスフィルムが、冷戦が崩壊して潰れかかっているんだそうです。 記事中のロシア地方紙の記者の指摘が洒落てます。 ――「モスフィルムは今や『巨大なレンタルビデオ屋』だ」(笑) 。。。いやいや、笑ってる場合じゃないぞ。(たぶん) 映画ファンにとってはこれもゆゆしき問題のハズ。 モスフィルムの衰退は、ヴィスコンティのような映画作家の作風が廃れ ゆくのと軌を一にした、映画文化の衰退傾向を示しているはずだから。 モスフィルムやヴィスコンティ風の映画を衰退させてきたのはハリウッ ド的な映画の作り方であったりしますが、そのハリウッド自体がかなり 深刻な低迷を続けている今日、今の映画づくりをさらに深めて発展させ ていく探求の術として、モスフィルムやヴィスコンティの映画技法は何 とかして残していくべきでしょう。 温故知新とはよく言ったもので、これらの「古い映画技法」を知らずし て新しい技法が生まれてくるはずがありません。そういう意味では、モ スフィルムの衰退はハリウッド――常に斬新な作風で映画ファンを魅了 し続けてきた映画の都――の長期低迷と両輪になっていないか、よく点 検してみる必要があるかもしれません。 以下、読売オンラインからの引用です。 ***** 旧ソ国立映画会社が苦闘、独立採算性で制作本数激減  ソ連時代の最盛期に年間600本の映画を量産した国立映画会社「モ スフィルム」が苦闘している。国家丸抱えから独立採算に変わって、自 作映画本数は昨年ついにたった1本までに落ち込んだ。今では、過去に 制作した映画の放映権料やテレビCM制作による収入で食いつなぐ状態 だ。(モスクワ 花田 吉雄)  「モスフィルム」は、モスクワ市内を見下ろす丘の1等地にある。総 面積34ヘクタールで、映画撮影に必要な設備はすべて整っている。だ が施設を見回ると、ソ連時代のまま時間が止まったような感じを受ける。 スタジオは老朽化が目立ち、閑散としている。唯一撮影が行われていた のは、ジューサーミキサーのテレビCMだった。同社によると、広告の 依頼は増えているが、映画ロケの予定は当分入っていないという。  「ソ連のハリウッド」ともいえる、1924年設立の「モスフィルム」 は、冷戦時代、共産党のプロパガンダ映画を制作する一方、「戦艦ポチョ ムキン」のエイゼンシュテインや、「惑星ソラリス」のタルコフスキー など、名監督を次々輩出した。従業員は一時、6000人に達していた。  だがソ連崩壊後、環境は一変。モスフィルムは依然国有だが、独立採 算制が導入され、金のかかる自社制作映画は、ソ連崩壊直前の年間平均 200本から一けたに激減した。現在の主な収入源はソ連時代に制作し た映画の放映権料で、全収入の7割強を占める。地元記者のユーリー・ グラジリシコフ氏は、「モスフィルムは今や『巨大なレンタルビデオ屋』 だ」と嘆く。  プーチン大統領は昨年春、衰退著しいロシア文化の「構造改革」を提 唱し、モスフィルムを含む全ロシアの映画企業の再建に着手した。だが 政府の方針は、著作権管理部門と映画制作部門を分割せよ、というもの で、映画制作部門の赤字を「ドル箱」の著作権管理部門で補ってきた同 社首脳陣は、「これでは即倒産」と悲鳴を上げた。このため改革案は現 在も、宙に浮いたままだ。  自身も映画監督である、カレン・シャフナザーロフ・モスフィルム社 長は「当社は、映画、テレビドラマ、広告から、外国映画の吹き替えま で何でも出来る」と強気を崩さない。だが、モスクワ市内の商業映画館 ではロシア映画が1本もかからないのが常態になっているだけに、「こ のままでは、社屋のある土地の売却も考えなくては」(在モスクワ映画 評論家)との悲観論も出ている。 (2月21日01:09) TITLE:YOMIURI ON-LINE/国際 DATE:2002/02/21 04:25 URL:http://www.yomiuri.co.jp/05/20020220id21.htm ***** (Kiwi)



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